悩みのるつぼ ◆小言幸兵衛について

またまた、朝日新聞の「悩みのるつぼ」の紹介です。
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悩みのるつぼ
「人の悪口しか言わない父」

44歳の女性です。73歳になる父のことで相談です。
何も極めたことがないのに、人を批判し、悪態をつくので困っています。
(中略)
万事こんな調子なので、父がそばにいるときはため息ひとつできません。
ひと言発すれば、その何倍もの言葉で集中攻撃を浴びます。
母はこんな父を見て、「若い頃、苦労しすぎてひねくれたんだ」と申します。
普段聞き流すよう努めてはいますが、仕事で疲れてイライラしているときはつい応戦してしまいます。私が常に心を平静に保ち、父と普通の会話をするにはどうしたらいいでしょうか。

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◆金子勝の回答
落語の「小言幸兵衛」をご存知でしょうか。幸兵衛さんは麻布の古川の家主で、長屋をひとまわりして、小言を言わないと飯もうまくないという人です。慣れた長屋の住人は気にしないのですが、新しい借り手が来ては難癖をつけて次々追い返してしまいます。
(中略)
人のいいところを見ず、なんとか欠点を探し出して文句を言う。あなたの父親に似ていませんか。

最後に職人風の男がやってきます。この男は、「うす汚ねえ貸家があるな」にはじまり、その後幸兵衛をまくしたて、幸兵衛さんに難癖をつける暇を与えません。
「おまえさんの商売は?」「鉄砲鍛冶だ」「どおりでポンポン言い通しだ」というオチで終わります。

あなたの父親は「小言幸兵衛」さんなのかもしれません。あなたは「普段聞き流すように努めています」と言いますが、これは長屋の店子たちの取っている態度に似ています。
お父さんが小言幸兵衛だとすると、あなたが普段している会話が「普通の会話」なのです。今73歳で、年を取って幸兵衛さんになったのです。齢(よわい)を重ねるとそういう傾向が出るのは少なくないのですが、他人に危害を加えているわけではありません。お母さんのように理解して適当につきあうのが一番「普通」なのだと思います。

「仕事で疲れてイライラしているときはついに応戦してしまいます」と言いますが、ときにはポンポン言うのもよし。落語に出てくる幸兵衛さんを相手にしているんだと思うと楽しく暮らせます。
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いつもながら、金子勝さんのウィットに富んだ、適切な回答に納得させられます。

悪口ばっかりの人、小言ばっかり言う人、そんな人にうんざりすることはあります。特に「頑固親父」、というように年齢を重ねた男性に多いようです。
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今日、本屋で60歳以降の人たちの「生き方」コーナーで、「みっともない老い方」という本があり、立ち読みしていると「偉そうにすぐ講釈する親父は嫌われる」という主旨のことが書いてありました。「親父」側も悩んでいるのかもしれません。

この記事を読んで、私は自分の亡くなった祖父のことを思い出しました。
祖父の家に行って、お茶を入れるのを手伝うと、お茶の入れ方が悪い、と文句を言われ、大学に合格したときや、就職がきまったときですら、最初は少し褒めるけれど、かならず冷や水を浴びせるようなことを言う。
私も昔は今よりも「我」が強かったので、すぐ応戦して口論になることもしばしばありました。
でも、祖父が事故に遭い、突然会話をすることができなくなってからすごく物足りなく、さびしい思いをしたものでした。

今は私の近くの幸兵衛はいませんが、高齢化社会の中、今後もそういう人に会うこともきっとあるでしょう。
小言幸兵衛だと思って、楽しんで受け流す。
そんな考え方って素敵ですね。011.gif
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