「同じ失敗をしないために記憶はある」 -信念(ブリーフシステム)と記憶―

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「同じ失敗をしないために記憶はある」

そもそも人間は、イヤな出来事をよく記憶するようにつくられています。
とくに強烈ないかりや悲しみなどの情動をともなう体験をした場合、人間の脳はことさらそれを記憶に止めようとします。007.gif

その理由は、次に同じことが起こりそうなときに、それを避けなければならないからです。
なぜ避けなければならないのか。
そこに生命のリスクがあるからです。005.gif

イヤな出来事を記憶することがなければ、私たちはせっかくそれを体験しておきながら、次もその次もおな轍を踏むことになり、生命のリスクにさらされつづけてしまいます。
文字通り「死んでしまう」ことはないにしても、厳しい生存競争に勝ち残ることはできなくなるでしょう。だから、私たちの脳はイヤな出来事をよく記憶するわけです。
人は失敗の記憶によって成長するわけです。

では、人間はなぜイヤな記憶、辛い記憶に悩まされるのか、そのカラクリを解き明かしていきましょう。大きなポイントは2つあります。072.gif

1つは人間の持つ“信念”の問題、もう一つは大脳の海馬と扁桃体のやりとりによって、失敗の記憶が増幅されるという問題です。

“信念”
の問題ですが、私が教えているコーチング用語ではプラス、マイナスを問わず、個々人が強く信じて疑わない固定的な考えのことを「ブリーフシステム」と呼んでいます。

ブリーフシステムとは、たとえば私はどういう人間なのか、相手というときはどう振る舞うか、社会に対して自分はどう働きかけるかなど、その人が身につけている認識のパターンのことです。005.gif

人は、そのブリーフシステムによって、未来のことを予期したり、予想したりしています。そしてその予期や予測にしたがって、人はあらゆる選択と行動を行っています。

たとえば私は上品な人間だからレストランではこう振る舞うと予測している人は、そう意識せずとも、ブリーフシステムがその通りに振舞わせてくれます。逆に私はそういう気取った人間でないと思っている人は、そう意識せずともその人のブリーフシステムが自然に気さくな振る舞いをするように仕向けているわけです。

一方、予測に反したことが起こり、認識のパターンがずれたときに、「これは覚えておかなければいけない事象だ」と働きます。013.gif

その瞬間に海馬は、失敗の情報を側頭葉に投げ込むわけです。

「こんなに目をかけてきたのに、オレをバカにするのか」とか「さんざん尽くしてきたのに、オレを裏切るのか」などと、予期に反する相手の反応が強く記憶に残るのも、こうした記憶のカラクリが働くがゆえです。

柔和な人間、裏表のない人間、酷薄な人間、善悪の区別の曖昧な人間、すべてにおいて付和雷同する人間、あるいは争いごとを好む人間。人間はそれぞれ、その人に特徴的な心理的特性を思っています。

こうした個々人が持つ心理的特性はどうやって生み出されるのか。
人の特性はブリーフシステムで決まる。
このような仮説を立てることができます。

すべての人間は自分に奉仕すべき存在だというブリーフシステムを持つ人は、中性ヨーロッパの王がそうであったように、他人を利用し、支配し、奪います。お金こそ全てだというブリーフシステムを持つ人は。愛情かお金かの究極の二者択一を迫られたとき、迷わずにお金を取ります。あるいは、生きとし生けるものみな平等というブリーフシステムを持つ人は、命の危険も顧みず環境や野生動物の保護などに平然と人生を投げ出します。071.gif

また、登校拒否児童のメカニズムまで、ブリーフシステムによって起こるのです。
「学校も仲間もみんな敵だ。こんな場所では息をすることもできない」という信念が子供に生まれ、一人家に閉じこもっているにもかかわらず、学校という概念を思うだけで震えるようになります。

こうした個々人の期待のパターンがその人の選択と行動を決定します。
つまり、個々人の心理的特性は、その人のブリーフシステムによって決まり、それが人格という誰の目でもわかる形で外部に現れるのです。

もちろん人間の持つブリーフシステムは一つではありません。
人間の内面で深い葛藤が起こるのは、ブリーフシステム同士が互いに矛盾を起こすからです。
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by hito2653 | 2013-01-14 00:14 | 読書