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大阪駅ホームレス襲撃殺人事件の根底にあるもの

<11月22日 読売新聞>
 JR大阪駅周辺で暮らしていた路上生活者5人が襲われ死傷した事件で、大阪府警捜査1課は22日、Aさん(67)を暴行して死亡させたなどとして、大阪市の無職少年や府立高校1年の男子生徒(17)ら16〜17歳の計5人=別の強盗致傷容疑で逮捕=を殺人容疑などで再逮捕した。少年らは「ストレス解消のため、面白半分でやった」と供述しているが、殺意は否認している。携帯電話のカメラで暴行の様子を撮影していたという。
 殺人容疑で逮捕されたのは、16歳と17歳の無職少年2人と、いずれも16歳の飲食店アルバイトと鉄筋工の計4人。容疑は先月14日午前3時ごろ、同駅そばの高架下で就寝中だったAさんの頭や顔を殴ったり蹴ったりし、外傷性くも膜下出血で死亡させたとしている。府立高の男子生徒は、前日午前3時35分ごろにAさんを暴行したとする傷害容疑で、無職少年とアルバイト少年の計3人とともに逮捕された。
 府警によると、5人は中学の同級生。無職少年は「襲った理由はなく、ノリでやった。思い切り蹴ったりしたら死んでしまったという感じ」などと供述。鉄筋工の少年は「サッカーボールをシュートするみたいに蹴った」などと話している。暴行は2日とも1分間ほどだった。府警が押収したアルバイト少年の携帯電話には、襲われるAさんが「助けて」と何度も叫ぶ映像が残されていたという。




この事件を聞いて、私は涙が出てきた。
もしかしたら、先日の講演会、「無縁社会を考える -孤独死ゼロへ-」に行っていなかったら、そんなことはなかったかもしれない。

何がそうさせたかと言うと、被害者の方が
「助けてー助けてー」と叫んでいた、ということ。
この人は「生きよう」としていたんだ、「誰かに助けを求めていた」のだ
・・・そう思ったからだ。

ただ、こういった襲撃事件の悲劇は若者による高齢者の殺害、というだけが問題なのであろうか。それではホームレスが社会的弱者だからか?・・それだけではない。

先日の講演のとき、湯浅誠氏は、「ホームレスの人にアパート等の住居支援をしても、まだホームレスに戻る人が多い、ということを聞いた。それは貧乏でアパートの家賃が払えないからか?・・・そうではない。
「孤独」
だからだ。・・・と。

身寄りがない、誰も助けてくれる人がいない孤独なホームレスの人は、ホームレス同士でコミュニティーを作って助け合って生きているのだ。
一般の人は「ホームレス」と聞くと、「怠慢である」とか人格的に欠陥を持っている、と思う人も多いが、大半の人は、普通のオッチャンだったりするという。

ただし、色々な事情で家族や社会に見捨てられ、路上生活を余儀なくされている。こういった人が亡くなっても「無縁仏」として福祉の人にしか線香をあげてもらえないことが多い。

通常、高齢者であれ、どんな人であれ、殺人事件で殺されてしまうと、マスコミは「被害者感情」として遺族にカメラを向け、遺族に無念を語ってもらうということが多いのだが、被害者がホームレスの人であると、その論点が語られることはない。

単に、社会的弱者が殺された、ひどい話ですね、というだけの報道。

家族のいない孤独、社会から認められない孤独、そして一人で死んでしまう孤独。

ただ、この被害者の方ももしかすると、ホームレス仲間の人から、「富さん」、とか愛称で呼ばれていたかもしれない。

この人は助けを求めていた。そして誰にも救ってもらえなかった。

加害者擁護をするわけではないが、加害者ももしかすると「孤独」だったのかもしれない。
こんなことでしか、仲間から認めてもらえない、空虚な心。

「孤独」が悲劇を生み、「孤独」が犯罪を誘発する。そんな風に感じた事件だった。
by hito2653 | 2012-11-23 17:38 | 雑感。